経費で落とすのはお得なのか?

自分は中小企業診断士という資格をもって経営コンサルタントの仕事をしています。

言い替えますと、税理士さんではありませんので、納税の個別具体的な相談にはのることができません。

という前提ですが、経費に関して常に気を付けていることがあります。

それは『経費で落とす』ことです。

この言葉、私は違和感があるので、自分では使っていません。

そもそも経費で落とすってどういうことなんでしょうね?

ちなみに、私はお金の話が好きなわけではありません。この記事でも書いていますように。

経費で落とすってどういうこと

会社員と個人事業主で比較してみます。

『経費で落とす』

会社員と事業主ではこの言葉の意味が違います。おわかりでしょうか?

会社員が仕事で使った費用を支払って会社に請求書する場合は全額会社からお金が戻ってきます。

これを会社員の時代の私は『経費で落とす』といいました。一般的にもそうだと思います(違うのかな?)。

ですので会社員が経費で落とすと、全額戻ってきます。

個人事業主の『経費で落とす』

一方で個人事業主が使った費用を経費にする場合です。これは収入を得るために使った『経費』になるということです。

収入を得るために使った経費にすると何がお得かというと、経費の分は税金を払わなくてよい、ということです。

税率は所得によって変わりますが、仮に所得税10%と住民税10%を払っているとします。合計20%です。

経費として使った額の20%に対しては、税金がかからなくなります。

①売上10万円、経費ゼロであれば、所得は10万円です。税率20%として税金は2万円になります。

②売上10万円、経費3万円であれば、所得は7万円です。税率20%として、税金は1万4千円です。

②は3万円の経費の20%分で、①より6千円お得なわけですよね、税金面で。

よって個人事業主さんは経費にした分の20%しか戻ってこないのですよ

(前段でお話した会社員の場合も、会社側の視点に立つと個人事業主さんと同じことです、税率以外は)

ですので経費で落ちないんです(全額は)。

なぜこんな当たり前のことを言うかといいますと、先日相談を受けた個人事業主の方が、このことをご存知なかったからです。

数字に弱い経営者さんは決してめずらしくありません。

でも経費が全額戻ってくると思っている方には初めて会いました。

さすがに税理士ではない牧野さんも『それはちょっと違いますよ』とお話してしまったわです。

経費で落とすはお得なのか?

経費(損金)計上した分は税金がかかりません。

前述の例をもう一度出します。

①売上10万円、経費ゼロであれば、所得は10万円です。税率20%として税金は2万円になります。

②売上10万円、経費3万円であれば、所得は7万円です。税率20%として、税金は1万4千円です。

この例でいいますと経費額の20%分はお得です。

でも残りの80%は戻ってくるわけでも誰かが支払ってくれるわけでもありません。

②の人は経費で3万円使っちゃってるので、所得自体は①より少ないわけですよ。

最もいいのは経費を使わないことです。

しっかり考えて本当に必要な経費だけを支払う事です。

『経費で落ちるから』というのは無駄遣いを助長しかねません。

無駄な経費を使えば、コストが増えますので事業が続けられなくなるかもしれません。

『売価は相場だが、コストは自分で決められる』

と京セラ創業者の稲森和夫さんは仰いました。

その通りだと私も思います。

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